2023年12月31日日曜日
2023年の仕事
2023年12月3日日曜日
講演会のお知らせ
2023年9月15日金曜日
サバティカル終了
一年のサバティカルを終えて日本に戻ってきました。久しぶりに大学の研究室に行ってみると、たくさんの郵便物が届いており、この間、お返事・お礼ができなかった方には申し訳ありません。
サバティカル最大の課題はなんといってもメルヴィルに関する日本語単著を完成させることでしたが、こちらは無事に書き終え、出版社も決めることができました。来年に出版予定です。
もう一つの課題として、アメリカの主要ジャーナルに論文を掲載するというものがあったのですが、こちらはまだうまくいっていません。ただ、自分の中で新しいことにチャレンジをしているという手応えはあります。簡単に自分の論文のスタイルは変わらないもので、自己改造は道半ばという感じです。
やろうと思えば、これまで出してきたような論文を今後も出し続けることはできるのだと思いますが、ここで結果を焦ると成長がなくて自分自身がつまらないので、力を溜める時期と思って当分頑張ろうと思います。
2023年6月5日月曜日
Society for Early Americanistsで発表してきます
6月8日-11日にメリーランド大学カレッジパーク校で開催される、Society for Early Americanistsという学会で発表をしてきます。
私が参加するパネルは以下のとおりです:
FRIDAY, 9 JUNE
Panel F: Contested Republics I
Panel Chair: Andrew Newman, Stony Brook University, SUNY
1. Samuel Seabury: Canonized and Noncanonical (James Greene, Indiana State University)
2. Asylum America: Exclusion of Others in Crèvecoeur and Brockden Brown (Yoshiaki Furui, University of California, Berkeley, Rikkyo University)
3. Speeches from the Dock: Irish Patriotism, Political Insurrection, and January 6th (Mark Kamrath, University of Central Florida)
サバティカル中はメルヴィルの単著原稿と並行して、アメリカにおける「アサイラム」という概念に関する研究を進めており、今回の発表はその一環です。クレヴクールの『アメリカの農夫の手紙』と、チャールズ・ブロックデン・ブラウンの『エドガー・ハントリー』を題材に取り上げます。いずれこの論は論文化したいと思っているので、よいフィードバックを得られればと期待しています。
以下が発表の要旨です:
In Crèvecœur’s Letters from an American Farmer (1782), America is idealized as “the asylum of freedom . . [and as] the refuge of distressed Europeans.” However, as if to contest this national ideal, Brockden Brown’s Edgar Huntly (1798) depicts how Clithero Edny, an Irish immigrant, is unjustifiably suspected of murder by American neighbors and is eventually evicted from community as alien, thus debunking the “America as asylum” myth. The same can be said of Crèvecœur’s narrative, in which the narrator, in the political turbulence of the Revolutionary War, finds himself persecuted by the Whigs and flees to the Indian territory in the end.
Although these narratives tell the nation’s failure to live up to its ideal, I argue that they also point to its survival in very implicit ways. Both Letters and Edgar Huntly simultaneously negate and retain the ideal by registering its presence on the margin of the national territory. In Letters, despite his earlier presentation of America as asylum, Farmer James ends up finding asylum in the Indian village. In Edgar Huntly, Clithero is ultimately sent to a mental asylum. Thus, the ideal of America as asylum is found in the outlying area that is allegedly outside, yet definitely within, America. Thinking about the ideal of America as asylum would urge a reconsideration of what constituted “America” in this period.
2023年4月13日木曜日
テキサス講演旅行 報告
三泊四日(4/3-6)のテキサス講演旅行を無事に終えて帰ってきました。形容しがたいほど濃密な経験で、準備は大変だったものの、結果的には行って本当によかったです。ホストしてくれたHouston Christian Universityの皆さんと、資金面のサポート(Fulbright Outreach Lecturing Fund)を与えてくれたフルブライトに感謝したいと思います。
どの授業、そして講演も皆さん熱心に聴いてくれただけでなく、何人もの学生さんが授業後に熱心に質問に来てくれたりなど、非常にやりがいがありました。アメリカ人相手に授業をするのはもう8年ぶりくらいだったので緊張したのですが、一度始まってしまえば昔の感覚を思い出し、楽しくやれました。
自分にとって英語はあくまで読み書きするもので、話すのは得意ではないのですが、今回の経験を通じて話す能力も磨いていきたいと思えました。
あと非常に印象的だったのはテキサスの人たちのhospitalityで、テキサス名物のBBQやステーキハウスなどに連れて行ってもらい、地元ならではの経験をたくさんさせてもらいました。
非常に興味深かったのは、現在住んでいるバークレーという超がつくリベラルな土地と、テキサスのキリスト教系大学という保守的といっていい場所の違いです。同じ「アメリカ」といっても違う国かと思うほどの違いを感じ、良くいえば「多様性」、悪くいえば「分断」を身をもって感じました。
大学ごとにマスコットの動物がいて、場合によっては実際にその動物を飼っているのはこちらのあるあるですが、この大学のマスコットはハスキー犬でした。偶然、校内を散歩中のハスキー犬(キージーという名前)と出会えたのもいい思い出です。
アメリカという国のつかみどころのなさを感じ、よりアメリカについて知りたくなった、そういう講演旅行になりました。サバティカルもあと五ヶ月、残りの期間も充実したものになるよう、積極的に行動していきたいと思います。
2023年4月4日火曜日
テキサス講演旅行
4月4日から6日まで、テキサスにあるHouston Christian Universityで講演と授業を行なってきます。フルブライトの交流事業の支援(Outreaching Lecturing Fund)を受けて、招待していただきました。
講演は"Networked Solitude in American Literature and Culture"というタイトルで、2019年の拙著に基づいた話をしてきます。
担当する授業は4つもあり、『白鯨』と「バートルビー」に関する授業では現在取り組んでいるメルヴィル単著の話をします。「異文化コミュニケーション」の授業では、海外での暮らし・研究に関する体験談、あともう一つでは、フルブライト奨学金の申請に関する経験談とアドバイスを話してきます。
準備がかなり大変なのですが、なかなかない機会だと思ってお引き受けしました。アメリカの学部生相手に授業をするのは、昔エモリー大学で教えていた以来なのでとても久しぶりです。初心に返ったつもりで頑張ってきます。
2023年3月25日土曜日
アメリカのジャーナルへの論文投稿
アメリカのジャーナルに論文掲載をする日本人研究者は、近年かなり増えてきた印象です。また、潜在的に興味を持っている方も多いのではないかと想像します。でも、日本の学会誌とどう違うの?と疑問に思われるのではないでしょうか。
先日、J19という雑誌の編集長たち(2名います)が、論文を受理してから掲載に至るまでのプロセス、さらにはどういう論文が掲載されやすいかなどについて、院生相手に話すオンライン・イベントがありました。その際の動画がオンラインで公開されています:https://www.g19collective.org/g19-working-groups/j19-g19-march-discussion。
J19は、私も以前「日本におけるアメリカ文学研究」について特集企画を載せたことがあり、お世話になったことのあるジャーナルです。19世紀アメリカ文学研究ではすでにトップ・ジャーナルの地位を築いており、その編集長たちから生の声を聞けるのはかなり貴重だと思います。
私自身にとってはそこまで目新しい情報はなかったのですが、海外誌を目指すこれからの方には必聴かと思い、シェアしました。この動画の内容に基づきながら、私なりに日本と違うアメリカのジャーナルの特徴をまとめると以下のようになります。どの雑誌も基本の方針は一緒です。
1、締切がなく、随時論文投稿を受け付けている。査読審査は基本2名。J19では、査読者には六週間以内に査読レポートを送るようにお願いしているとのことだったが、これはかなり良心的。経験上、半年以上待たされることはザラ。
2、掲載されるにしても、改稿(revision)は必須。動画でも、ほとんどそのままの形で載ることはまずないと言っていた。数ヶ月かけて改稿したものを再投稿、その後、また数ヶ月かけて再審査、採否の決定、という流れ。
3、上記の理由のため、投稿から掲載まで非常に時間がかかる。早い場合は1年というケースも経験したことがあるが、2、3年は覚悟したほうがよい。
大まかにはこんなところでしょうか。日本は締め切り、掲載時期まで明確に決まっているので、業績を作る必要がある若手には安心のシステムになっているかと思います。一方、見通しが立てづらいアメリカのジャーナルは、日本の若手には酷なシステムになっています。
あと、動画を見て改めて思ったのは、論文一本の価値が日米ではかなり違うということです。日本では就職前の若手に業績三本を求めるのが普通ですが、アメリカで院生がそんなに業績を作れるわけがありません。
では日本もアメリカ式にしたらいいのではないか、というとそう簡単でもなく、そもそも研究者の母数が違うので、システム構築の面で同じようにはできないと思います(投稿がそこまで集まらない、査読者の確保の問題、等々)。あと、アメリカではジャーナルの編集長になると授業負担の軽減などが大学から認められるくらいで、相当な仕事量が求められ、日本ではそれは難しいだろうなと思います。
私個人は、テニュア付きのシニア研究者も、就職前の院生も、同じ土俵で評価されるアメリカのジャーナルに魅力を感じており、これからも投稿し続けると思います。日本の雑誌は若手の登竜門的な位置付けになっていますが、就職してからも論文審査で戦えて、審査で忌憚ない批判をもらえる場所は海外にたくさんあります。特に博士号取得後、就職後になると、丁寧な批判をもらえる機会が減ってしまうので、私個人にとっては貴重な機会です。似たような志を持った人がこれからさらに現れることを願っています。
2023年3月10日金曜日
論文が公開されました
アメリカ学会発行のThe Japanese Journal of American Studiesの最新号がネットで公開されました:http://www.jaas.gr.jp/journal-e.html。
Herman MelvilleのTypeeについて論じた私の論文も収録されています。上記のHPからどなたもPDFをダウンロードできるので、ご興味があればご覧ください。
特集タイトルは「Mobility/Immobility」となっていますが、私のものは特集論文や依頼論文ではなく、自由投稿論文枠に投稿したので、特にこのテーマに関係する議論はしていません。
アメリカ学会の機関誌(英文号、和文号ともに)は毎回特集テーマで論文投稿を募りつつ、それとは関係ない論文も「自由投稿論文」として応募を受け付けているようです。
2023年1月26日木曜日
国際ワークショップのお知らせ
『週間読書人』で拙著が取り上げられました
12月20日刊行『週間読書人』の「2024年回顧--収獲動向」という特集で、拙著『誘惑する他者:メルヴィル文学の倫理』が取り上げられました。評者は福岡女子大学の長岡真吾先生です。 「海外学術誌に掲載された論文を日本語にしてまとめた精緻な労作」と紹介してくださっています。ありがとう...
-
一人の研究者が書いたものを、時系列順に読み進めてゆく-- そんな経験はあるでしょうか。 先日、紀伊國屋書店で阿部幸大さんとの対談が開催されましたが(お越しいただいた方々、ありがとうございました)、事前準備として、阿部さんが書いた論文を8本ほど時系列順に読むことで、「阿部幸大研究」...
-
阿部幸大さんの『まったく新しいアカデミック・ライティングの教科書』をご恵投いただきました。7月24日に発売予定のご本です: https://amzn.asia/d/0gxDM3a8 。 このブログは私の仕事の告知用に運用しているので、他の方のお仕事を紹介したことはないのですが、こ...
-
公開からずいぶん時間が経ってしまいましたが、筑波大学の阿部幸大さんがブログで「古井義昭『誘惑する他者:メルヴィル文学の倫理』の取扱説明書」というタイトルの書評を書いてくださいました: https://abc-kd.hatenablog.com/entry/2024/03/09/1...