2025年3月2日日曜日

『アメリカ文学史への招待ーー豊饒なる想像力』刊行

私が分担執筆を行った『アメリカ文学史への招待:豊饒なる想像力』(橋本安央・ 藤井光・ 坂根隆広編著、法律文化社)が手元に届きました。

私は「ヘンリー・デイヴィッド・ソロー」(pp. 54-55)、「森の生活:ウォールデン」(pp. 182-83)の二つを担当しました。同僚の舌津智之先生、小南悠先生もご寄稿されており、立教勢が活躍している本です。

文学史の流れを広く深く知ることができる、充実の内容です。アメリカ文学に関わる方は、ぜひ一冊お手元においていただきただければ幸いです。

Amazonへのリンクはこちらから。刊行は3月中旬となるようです。

2025年2月13日木曜日

海外出版に関するシンポジウムのお知らせ

3月14日(金)に、「論文投稿と学術書出版のジオポリティクス:海外ジャーナルとアメリカ大学出版局」というシンポジウムに登壇します。詳細は以下のポスターをご覧ください。


参加には以下のリンクから登録が必要です。ポスターの画質がうまく設定できないのですが、シンポの詳細はこのリンク先でも読めます:https://forms.gle/WXWXfdnUyiXQ8Ab79

筑波大学の阿部幸大さん、竹谷悦子先生とご一緒します。阿部さんは売れっ子ですでに有名人かと思いますが、竹谷先生は日本の学会などでご登壇される機会も少ないので、お話を伺うとても貴重なチャンスとなります。ポスターのパネリスト紹介にあるように、すさまじいご業績です。日本の英米文学研究者を広く見渡しても、英語圏の土俵でここまで結果を出している人は竹谷先生をおいて他にいません。

竹谷先生はすでに2冊の研究書をアメリカの大学出版局から出しており、なんとまた新著を新著を刊行予定とのこと。すごいバイタリティです。そんな竹谷先生のお話を聞けるだけでも本当に貴重な機会で、私が一番楽しみにしているかもしれません。

私は、「博論から単著へ:アメリカ大学出版局奮闘記」と題して、アメリカの大学出版局から研究書を出版した経験についてお話しします。私が博論の書籍化を目指していたとき、アメリカの大学出版局から単著を出すには具体的に何をどうしたらいいのか、アドバイスをくれる人は周りにまったくいませんでした(経験者がいなかったので)。そのため、手探りのまま出版社にメールを送るところからの出発となり、スタートの時点で非常に苦労した経験があります。

そういう苦労は本来はしなくていい苦労であり、人から教えてもらえば簡単に省けるものです。アメリカ大学出版局からの単著刊行を目指す人が、これから同じような苦労をする必要がないよう、私の経験をお伝えできればと思います。昔の自分であれば、こういうイベントがあったらどれだけ助かったかわかりません。今後、アメリカ文学に関する研究書をアメリカで出版する、という人が増えていってほしいと勝手に願っています。

書籍化の話だけだとハードルが高いと思いますが、阿部さんと竹谷先生は海外ジャーナルの話もされるとのことですので、まずは海外誌に投稿してみたい、という人も必聴です。

研究成果を英語で世界に発信するのはめちゃめちゃ楽しいことなので、「自分もやってみたい!」と思っていただけるようなお話ができればと思っています。奮ってご参加ください。

2025年2月2日日曜日

『誘惑する他者』書評


日本メルヴィル学会の機関誌『Sky-Hawk』最新号にて、巽孝之先生に『誘惑する他者:メルヴィル文学の倫理』を書評していただきました。ありがとうございます。

巽先生にしか絶対に書けない書評で、冒頭の数ページは日本のアメリカ文学研究の発展と国際化の歴史が語られます。その文脈のなかに私のこれまでの仕事(イベントの企画等も含む)を位置付けたうえで、「日本出身のスカラー=クリティックが国際的エディター/プロデューサーをも兼ねうる21世紀の「アメリカ文学者の仕事」そのもの」(30)と評していただきました。

これは個人的にかなり嬉しい評価です。というのも、国際的に人々をつなげる仕事をこれまで公の場で評価されたことはなく、そこに目を向けてくれる人がいたらいいなあ、と思ってきたからです。私は研究発信そのものだけではなく、J19というアメリカのジャーナルで日本のアメリカ文学研究を紹介する企画を実現させたり、それに関するオンライン・イベントも企画したりなど、意識的に日本人研究者が海外に目を向け、海外研究者が日本に目を向けてくれるように努力してきました。そういった地味な活動に光を当てていただいたことで、これまでの努力が報われるような思いをしました。

続く本書自体の評では、特に本書の「脱構築以降の精読」(32)、特に『ピエール』論におけるink/kinのアナグラムなどを評価していただきました。私はこれまでデリダを論文や本で直接引用したことはない気がしますが、文学の読解においてデリダや脱構築批評にかなり影響を受けており、脱構築の盛り上がりをリアルタイムで経験した巽先生に、私の脱構築的読解に目をつけていただいて嬉しかったです。

さらにご指摘いただいて勉強になったのは、脱構築批評が隆盛を誇っていた時点で倫理批評はすでに存在したという点(33)で、そこは盲点でした。これも脱構築批評に精通している巽先生ならではのご指摘です。

というわけで、巽先生の書評は拙著の内容だけではなく、日本のアメリカ文学研究の国際化の歴史、脱構築批評と倫理批評の関係まで勉強になる、非常に濃い内容になっています。ご興味がある方はぜひお読みいただければと思います。なかなか入手しづらい媒体なので、読みたい人は個人的にご連絡ください。

追記:法政大学出版局のXでも取り上げてもらいました:https://x.com/hosei_up/status/1885930831023362355





2025年1月22日水曜日

今後の目標:アメリカの大学出版局から単著を出します

今後の長期的な目標を自分のなかで定めたので、自分を追い込む意味でも公の場で記しておきます。

40代のうちに、アメリカの大学出版局から研究書を出版します。

昨年の3月に『誘惑する他者:メルヴィル文学の倫理』を出版してから早くも一年近くが経過しましたが、ここ半年ほど、次はいったい何を目指せばいいのか思い悩む日々を過ごしていました。

上記のメルヴィル本を出したときは41歳で、自分のなかでは30代までの研究の総決算のような本でした。これから40代を過ごすうえで何を目的にすべきか考えた結果、上記の目標に向けて動いていきたいと思います。

40代のうち、というのはなんとなく区切りがあるほうが頑張れるから、くらいの意味で、もっと早く出せればそれに越したことはないです。でも、向こうで単著を出すのは容易ではないので、けっこう時間がかかると思います。

テーマはasylum(避難所)です。すでにいくつか論文を書いており、そのうちの一つは「アサイラム・ファミリー」というタイトルで日本語共著として出版済みです。

2019年に最初の単著Modernizing Solitudeをアメリカの大学出版局から出したときは、「こんな大変なことはこりごり」と思ったのですが、日本語の単著執筆を経て、もう一度チャレンジしたくなりました。考えるだけで早くもうんざりしますが(本当に大変、特に査読審査が)、頑張ります

こう書くと立派な目標に聞こえるかもしれませんが、大変なぶん、やりがいがあるので楽しいほうを選んでいる、というシンプルな話です。周りから求められているわけではないので、何をしたらいかに自分が満足できるか、という自己満足の問題なのかもしれません。

2024年12月28日土曜日

2024年の仕事

今年の仕事の振り返りをします。今年の仕事は以下の通りです。

【単著】

『誘惑する他者──メルヴィル文学の倫理』法政大学出版局、2024年。

【査読論文】

"Ventriloquizing the South: Reading Melville across the Civil War." Journal of American Studies, forthcoming.  

【その他の書いたもの】

・「寂しさの発明──オースターとメルヴィル」『ユリイカ ポール・オースター特集号』pp. 186-94、2024年。

・(書評)西谷拓哉・髙尾直知・城戸光世編著『ロマンスの倫理と語り──いまホーソーンを読む理由』 (開文社、2023年)、『英文学研究』第101号、pp. 155-59、2024年。

【口頭発表等】

・(学会発表)「痛みを測る──Dickinson作品における言語と他者」第96回日本英文学会シンポジウム 「健康・病・障害──19世紀アメリカ文学の新展開」、 2024年5月5日、東北大学

・(学会発表)「Breaking English──メルヴィルのテクストスケープ」第11回日本メルヴィル学会「思想家を通してメルヴィルを語る」、2024年9月15日、龍谷大学 

・(阿部幸大氏との対談)「アカデミック・スキルと日本の人文学の未来」2024年8月29日、紀伊國屋書店新宿本店

今年はなによりメルヴィルに関する単著を出版したことが大きな成果ですが、もうだいぶ前の話ですし、10年間の研究成果をまとめた本なので、「今年の仕事」という感じがしません。

Journal of American Studiesに掲載が決まった論文は、本来は今年出版予定だったのですが、ケンブリッジ大学出版局がサイバー攻撃を受けて復旧に時間がかかっており、世に出るのは来年になってしまいました。サバティカル時代に書いた論文がいいジャーナルに掲載が決まって嬉しいです。

上記以外にも、今年はこれから出る共著など、書き仕事をけっこうやりました。今後の出版予定などを以下に記します。

【共著】

・上記のディキンソンと痛みに関する論を論文化し、国内の共著に寄稿。2025年出版予定。

・solitudeに関する海外の共著に寄稿。2026年出版予定。現在、編者のコメントを受けて改稿中。

・メルヴィルに関する海外の共著に寄稿。2026年出版予定。

【項目執筆】

・アメリカ文学史の教科書にソローに関する項目を二つ寄稿。2025年出版予定。

【学会発表】

・2025年、アメリカでの国際メルヴィル学会で発表予定。 

今年はとにかく校務に追われまくって研究ができなかった、という記憶しかないのですが、こうしてまとめてみるとそれなりに頑張ったように思えます。特に海外から共著執筆依頼が二つあったのは、英語での研究活動が向こうでも認められたようで嬉しく、頑張って原稿を書きました。

来年は今年以上に校務が忙しくなりそうなのですが、なんとか自分の研究時間を守れるように頑張っていきたいです。

大学に就職して以来、長期休みごとに英語論文を一本書き、それを海外ジャーナルに投稿するというペースを死守してきましたが、今年は依頼原稿を書くので手一杯で、初めてそれができませんでした。これまで自分の研究、自分のペースを守ることに囚われてきたところがあるので、ある程度は依頼に身を委ねて仕事の幅を広げつつ、一方では査読論文を書くということも継続していきたいです。

2024年12月27日金曜日

書評が掲載されました

書評といっても、自分の本の書評ではなく、自分が書いた書評です。日本英文学会発行の『英文学研究』最新号に、西谷拓哉・髙尾直知・城戸光世編著『ロマンスの倫理と語り--いまホーソーンを読む理由』(開文社、2023年)が掲載されました。本の書誌情報はこちらから:https://www.kaibunsha.co.jp/books/view/2900

私はホーソーンが「苦手」なのですが、そういう苦手意識を持っている人にこそ読まれるべき論集である、という評を寄せています。苦手と言いつつ、論文も書いたことがあるし、授業では毎年のようにホーソーン作品を購読しているのですが。この論集を読んで、自分もホーソーン論を書こうかという気にさせられました。

2024年12月21日土曜日

『週間読書人』で拙著が取り上げられました

12月20日刊行『週間読書人』の「2024年回顧--収獲動向」という特集で、拙著『誘惑する他者:メルヴィル文学の倫理』が取り上げられました。評者は福岡女子大学の長岡真吾先生です。

「海外学術誌に掲載された論文を日本語にしてまとめた精緻な労作」と紹介してくださっています。ありがとうございます。

他にもいくつかの研究書と、さまざまな翻訳書が紹介されています。大きくない紙面ですが、そのなかにぎっしりと今年の「収穫」がまとめられています。

『アメリカ文学史への招待ーー豊饒なる想像力』刊行

私が分担執筆を行った『アメリカ文学史への招待:豊饒なる想像力』(橋本安央・ 藤井光・ 坂根隆広編著、法律文化社)が手元に届きました。 私は「ヘンリー・デイヴィッド・ソロー」(pp. 54-55)、「森の生活:ウォールデン」(pp. 182-83)の二つを担当しました。同僚の舌津智...