2025年2月13日木曜日

海外出版に関するシンポジウムのお知らせ

3月14日(金)に、「論文投稿と学術書出版のジオポリティクス:海外ジャーナルとアメリカ大学出版局」というシンポジウムに登壇します。詳細は以下のポスターをご覧ください。


参加には以下のリンクから登録が必要です。ポスターの画質がうまく設定できないのですが、シンポの詳細はこのリンク先でも読めます:https://forms.gle/WXWXfdnUyiXQ8Ab79

筑波大学の阿部幸大さん、竹谷悦子先生とご一緒します。阿部さんは売れっ子ですでに有名人かと思いますが、竹谷先生は日本の学会などでご登壇される機会も少ないので、お話を伺うとても貴重なチャンスとなります。ポスターのパネリスト紹介にあるように、すさまじいご業績です。日本の英米文学研究者を広く見渡しても、英語圏の土俵でここまで結果を出している人は竹谷先生をおいて他にいません。

竹谷先生はすでに2冊の研究書をアメリカの大学出版局から出しており、なんとまた新著を新著を刊行予定とのこと。すごいバイタリティです。そんな竹谷先生のお話を聞けるだけでも本当に貴重な機会で、私が一番楽しみにしているかもしれません。

私は、「博論から単著へ:アメリカ大学出版局奮闘記」と題して、アメリカの大学出版局から研究書を出版した経験についてお話しします。私が博論の書籍化を目指していたとき、アメリカの大学出版局から単著を出すには具体的に何をどうしたらいいのか、アドバイスをくれる人は周りにまったくいませんでした(経験者がいなかったので)。そのため、手探りのまま出版社にメールを送るところからの出発となり、スタートの時点で非常に苦労した経験があります。

そういう苦労は本来はしなくていい苦労であり、人から教えてもらえば簡単に省けるものです。アメリカ大学出版局からの単著刊行を目指す人が、これから同じような苦労をする必要がないよう、私の経験をお伝えできればと思います。昔の自分であれば、こういうイベントがあったらどれだけ助かったかわかりません。今後、アメリカ文学に関する研究書をアメリカで出版する、という人が増えていってほしいと勝手に願っています。

書籍化の話だけだとハードルが高いと思いますが、阿部さんと竹谷先生は海外ジャーナルの話もされるとのことですので、まずは海外誌に投稿してみたい、という人も必聴です。

研究成果を英語で世界に発信するのはめちゃめちゃ楽しいことなので、「自分もやってみたい!」と思っていただけるようなお話ができればと思っています。奮ってご参加ください。

2025年2月2日日曜日

『誘惑する他者』書評


日本メルヴィル学会の機関誌『Sky-Hawk』最新号にて、巽孝之先生に『誘惑する他者:メルヴィル文学の倫理』を書評していただきました。ありがとうございます。

巽先生にしか絶対に書けない書評で、冒頭の数ページは日本のアメリカ文学研究の発展と国際化の歴史が語られます。その文脈のなかに私のこれまでの仕事(イベントの企画等も含む)を位置付けたうえで、「日本出身のスカラー=クリティックが国際的エディター/プロデューサーをも兼ねうる21世紀の「アメリカ文学者の仕事」そのもの」(30)と評していただきました。

これは個人的にかなり嬉しい評価です。というのも、国際的に人々をつなげる仕事をこれまで公の場で評価されたことはなく、そこに目を向けてくれる人がいたらいいなあ、と思ってきたからです。私は研究発信そのものだけではなく、J19というアメリカのジャーナルで日本のアメリカ文学研究を紹介する企画を実現させたり、それに関するオンライン・イベントも企画したりなど、意識的に日本人研究者が海外に目を向け、海外研究者が日本に目を向けてくれるように努力してきました。そういった地味な活動に光を当てていただいたことで、これまでの努力が報われるような思いをしました。

続く本書自体の評では、特に本書の「脱構築以降の精読」(32)、特に『ピエール』論におけるink/kinのアナグラムなどを評価していただきました。私はこれまでデリダを論文や本で直接引用したことはない気がしますが、文学の読解においてデリダや脱構築批評にかなり影響を受けており、脱構築の盛り上がりをリアルタイムで経験した巽先生に、私の脱構築的読解に目をつけていただいて嬉しかったです。

さらにご指摘いただいて勉強になったのは、脱構築批評が隆盛を誇っていた時点で倫理批評はすでに存在したという点(33)で、そこは盲点でした。これも脱構築批評に精通している巽先生ならではのご指摘です。

というわけで、巽先生の書評は拙著の内容だけではなく、日本のアメリカ文学研究の国際化の歴史、脱構築批評と倫理批評の関係まで勉強になる、非常に濃い内容になっています。ご興味がある方はぜひお読みいただければと思います。なかなか入手しづらい媒体なので、読みたい人は個人的にご連絡ください。

追記:法政大学出版局のXでも取り上げてもらいました:https://x.com/hosei_up/status/1885930831023362355





『アメリカ文学史への招待ーー豊饒なる想像力』刊行

私が分担執筆を行った『アメリカ文学史への招待:豊饒なる想像力』(橋本安央・ 藤井光・ 坂根隆広編著、法律文化社)が手元に届きました。 私は「ヘンリー・デイヴィッド・ソロー」(pp. 54-55)、「森の生活:ウォールデン」(pp. 182-83)の二つを担当しました。同僚の舌津智...