2021年10月29日金曜日

"The Encantadas"論がLeviathan誌に掲載されました

 メルヴィルの"The Encantadas"を論じた拙論が、Leviathan: A Journal of Melville Studiesに掲載されました。書誌情報は以下の通りです:

Furui, Yoshiaki. "Against the Assaults of Time: Uncertain Futurity in 'The Encantadas.'" Leviathan: A Journal of Melville Studies, vol. 23, no. 3, 2021, pp. 73-88. 

論文URL: https://muse.jhu.edu/article/825564

この号は、2018年にニューヨークで開催された国際メルヴィル学会において、私が参加したパネルが出発点となっており、Spanish America特集号になっています。私は"The Encantadas"におけるスパニッシュ・アメリカをめぐる時間と歴史の問題に焦点を当てて論じています。

基本的には、発表時の原稿の内容が元にはなっているのですが、論文化する上では気の遠くなるようなプロセスがありました。

特集号を組むということで寄稿依頼があったわけですが、依頼があったからといって簡単に掲載されるということではなく、この特集号のゲスト・エディターであるEmilio Irigoyen氏とNick Spengler氏から草稿に対して徹底的な改稿要求がありました。二人で100個以上のコメントをつけてもらった(つけられた)ファイルを開いたときは、膨大なコメント量に頭がクラクラしました。お二人ともSpanish America表象を専門にしているので、微に入り細に入り、本当に細かいところの正確性をつめてくれて、研究者としてのプロフェッショナリズムを感じました。二人の献身的なコメントがなければ、とても掲載可能なレベルには到達しえなかったと思います。

ゲストエディターのOKが出たところでようやく終わりかと思ったら、今度はジャーナル側の二名による匿名査読もあり、思わず心が折れそうになりましたが、このようにようやく形になってよかったです。

あと、今回の経験を含めて痛感したのは、アメリカにおいては「依頼があったから自動的に掲載が保証されることはない」、という点です。前にも、違うアメリカのジャーナルから依頼があり、喜んで書いたものの掲載を断られたという苦い経験があり、日本の文化とは違うなと感じました。まったく油断なりません。

ほとんど苦労話のようになっていますが、改めてLeviathanは質を担保するための査読制度が徹底しているな、と改めて感じ入りました。私が初めてこの雑誌に掲載されたのは2013年のThe Confidence-Man論でしたが、その際も本当に鋭い査読コメントをもらいました。その時に徹底的に改稿した経験が、自分にとって、研究者になる上での本当に大きなターニング・ポイントとなりました。学術論文とは、ここまで厳密に書かねばならないのか、と叩き込まれた経験でした。Leviathanに掲載されるのは今回で三度目ですが、自分を育ててくれたジャーナルとして非常に感謝しています。

今号は豪華な寄稿者たち(Anna Brickhouse, Rodrigo Lazo氏ら)が論考を寄せており、読み応えのある号になっています。ご興味があればぜひお読みください。



『週間読書人』で拙著が取り上げられました

12月20日刊行『週間読書人』の「2024年回顧--収獲動向」という特集で、拙著『誘惑する他者:メルヴィル文学の倫理』が取り上げられました。評者は福岡女子大学の長岡真吾先生です。 「海外学術誌に掲載された論文を日本語にしてまとめた精緻な労作」と紹介してくださっています。ありがとう...