2020年12月31日木曜日

2020年の仕事

 2020年も終わりということで、備忘録的に今年の仕事をまとめて一年の振り返りをしたいと思います。

論文

"Lonely Individualism in Moby-Dick." Criticism, vol. 62, no. 4, 2020, pp. 599-623. 

口頭発表

「メルヴィル文学における他者の深層:『タイピー』を中心に」九州アメリカ文学会12月例会、2020年12月12日

その他

コメンテーター「文学批評の再検討:ポストクリティークあるいは批評の再興?」2020年7月26日

受賞

アメリカ学会第25回清水博賞(2020年6月)

日本アメリカ文学会賞(2020年10月)

なかでも、新しい論文を一本、しっかりした媒体に掲載できたのはよかったです。査読論文は、ちゃんといいものを書こうと思ったら、正直なところ2、3年に一本くらいが適切なペースだと考えています。過去5年ほどは1年に一本ペースなので、うまく行きすぎているところがあります。今後も焦らずにいい論文を積み上げていきたいと思います。

受賞に関しては本当にありがたい幸運だとしか言えません。出版にこぎつけるまで本当に大変だったので、その苦労に対する労いだと思っています。何度、査読でリジェクトされ、心がくじけそうになったか・・・。最後の最後に、湯島天神で絵馬を書いて、査読審査に通るよう神頼みしたのは今となってはいい思い出です。

来年の予定ですが、現在決まっているのは、日本語の共著が二冊、英語の短い論考が一つ(あるアメリカのジャーナルで企画を担当し、自分はイントロを執筆)です。あと、もし査読がうまくいけばもう一本、アメリカで英語論文が出せるかもしれません。日英両方の言語で、バランスよく仕事をしていければと思います。

最後に、数年以内に日本語でのメルヴィル論を単著として上梓することを現在の目標にしています。この目標を見失わないよう、自分に対する戒めとしてここに宣言しておきます。いちおう、それを視野にメルヴィルの作品論を書き溜めており、未発表の論文が3本ほど手元にあります。これからあと何本か書き足す予定です。

2020年11月27日金曜日

『白鯨』論が出版されました

 Criticism誌の最新号に『白鯨』論が掲載されました。書誌情報は以下のとおりです:

Furui, Yoshiaki. "Lonely Individualism in Moby-Dick." Criticism, vol. 62, no. 4, pp. 599-623. 

オンラインアクセス 

Project Muse:  https://muse.jhu.edu/article/774762/pdf

JSTOR: https://www.jstor.org/stable/10.13110/criticism.62.4.0599?seq=1#metadata_info_tab_contents

単著Modernizing Solitudeで展開した議論の延長線上として、アメリカ文学における個人主義をlonelinessという感情の側面から検討した論文です。自分なりにある程度満足のいくクオリティーに仕上がったと思うので、多くの方に読んでいただきたいと思います。

おそらく、最初に原稿をあるジャーナルに投稿したのが2年半前くらいです。しかし、あともう少しのところでそのジャーナルに落とされ、改稿を経てCriticismに投稿し、改稿指示を受けてもう一度投稿し、ようやくアクセプトされました。

苦労のすえ論文を出して毎回思うのは、自分は査読文化というものに育てられてきたな、ということです。名前も顔もわからない査読者に厳しいコメントをもらい、ダメ出しをされるというのは、自分にとってはよい論文を書く上で欠かせない過程です。

容赦なくダメ出しをされるのは辛くもありますが、そういう場所に身を置かないと成長しないと思うので、今後も地味に査読論文を積み上げていきたいと思います。

論文にアクセスできない方は、個別にメールをいただければファイルをお送りします。

2020年11月22日日曜日

講演のお知らせ

12月12日(土)に、 アメリカ文学会九州支部12月例会にて講演を行います:http://www.als-j.org/contents_1847.html。

詳細を抜粋すると以下の通りです:

日時:2020 年 12 月 12日(土)14 時00分から 17時00分 

場所:Zoom 会議(九州工業大学 Web 会議室)

接続先 URL、ミーティング ID、パスワードは例会前日に KALS のメーリングリスト を通じてお知らせします。恐れ入りますが、各自で Zoom 会議ができる環境を整えて おいて下さい。

[講演] 15 時 20 分から 16 時 40 分

講師:古井義昭(立教大学) 「メルヴィル文学における他者の深層——『タイピー』を中心に」

 司会:高橋勤(九州大学)

なお、支部会員以外の方には、オンラインミーティング用の接続先URL、ミーティングID、パスワードをお知らせいたしますので、以下までお問い合わせください。

【問い合わせ先】大野瀬津子 ohno[@]dhs.kyutech.ac.jp ([@]を@に変えてください)

私は現在、メルヴィルに関する日本語単著を出版すべく、これまで発表したメルヴィル論文を修正したり、新たなメルヴィル作品論を執筆中です。今回発表させていただくのは、未発表の『タイピー』論となります。

支部会員の方以外も参加可能とのことですので、ご興味があればご参加ください。

2020年10月12日月曜日

第5回日本アメリカ文学会賞を受賞しました

このたび、著書Modernizing Solitude: The Networked Individual in Nineteenth-Century American Literature (University of Alabama Press, 2019)により、第5回日本アメリカ文学会賞を受賞しました。アメリカ学会「第25回清水博賞」に続いての受賞となります。

勤務先の立教大学のHPでも宣伝してもらいました:https://www.rikkyo.ac.jp/news/2020/10/mknpps000001c4p1.html

HPに寄せた私のコメントを引用します:

アメリカで出版された研究書ではありますが、本書において私は、留学先のアメリカで身につけた文学研究の方法論と、日本で培った文学作品の精読の二つを架橋しようと試みました。日本的な要素を多分に含む本書が、日本の学会から名誉ある賞を受賞できたことは大きな喜びです。

このコメントにある通り、アメリカで出版された本書はアプローチの面ではアメリカのアカデミズムに寄り添いつつ、その一方で日本的な文学読解の姿勢も貫いており、いわばハイブリッドのような本になっているのではないかと思います。

実はこの本が日本的である、という点は、これまで何度か開いていただいた合評会や、個人的にお寄せいただいたご感想を通じて気づいたものです。本を必死で書いているときは、そのようなことはまったく考えていませんでした。貴重なコメントをくださった方々にも、この場を借りて御礼申し上げます。

次は日本語での単著(メルヴィル論)を出すのを目標にしており、ここ数年で形にしたいと思っています。この度の受賞を励みに頑張ります。

2020年7月10日金曜日

ワークショップのお知らせ

7月26日に開催の以下のワークショップに参加します。どなたでも参加自由のようなので、興味がある方はぜひどうぞ。私はディスカッサントとして登壇します。

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ワークショップ「文学批評の再検討――ポストクリティークあるいは批評の再興?」
Reconsidering Literary Criticism: Postcritique or the Revival of Criticism?
2020年7月26日(日)午後1時〜4時

概要:1970年代以降、英語圏ではさまざまな文学理論・批評理論が台頭しましたが、現在の英米文学研究のパラダイムが広義の「歴史主義」に規定されていることはほぼ間違いないでしょう。しかしながら90年代半ば以降から徐々に、Eve Kosofsky Sedgwickの“reparative reading”やRita Felskiのいう“postcritique”、Isobel Armstrongの “radical aesthetics”、さらに最近ではJoseph Northの唱える“criticism”の再興など、支配的な歴史主義的研究手法への批判や代替案が頻繁に提起されてきています。このワークショップでは、こうした近年の動向を受けて、歴史主義以後の現在「文学批評」にはどんな新たな可能性があるのかを考えます。

司会 秦 邦生(東京大学准教授)
発表 勝田悠紀(東京大学博士課程)
   岸まどか(ルイジアナ州立大学研究員)
   町本亮大(ロンドン大学UCL博士課程)
応答 古井義昭(立教大学准教授)

このワークショップはZoomで開催します。参加ご希望のかたは7月24日(金)までにご連絡ください。連絡先はチラシをご覧ください。

主催「英国モダニズムにおける反心理学の系譜に関する学際的かつ国際的研究」(基盤研究(B)研究代表者・遠藤不比人)


2020年6月23日火曜日

アメリカ学会「第25回清水博賞」を受賞しました

このたび、著書Modernizing Solitude: The Networked Individual in Nineteenth-Century American Literature (University of Alabama Press, 2019)により、アメリカ学会「第25回清水博賞」を受賞しました。

勤務先の立教大学のHPでも宣伝してもらいました:https://www.rikkyo.ac.jp/news/2020/06/mknpps00000196zj.html


出版に至るまでに苦労が多かった本だったので、このような賞を頂けてこれまでの努力が報われる思いがします。


選考には計5名もの査読者が拙著を読んでくださったようで、査読者の方々をはじめ、選考にかかわってくださった学会の皆様方に感謝申し上げます。


今回の受賞を励みにさらに研究を頑張ります。

2020年4月10日金曜日

メルヴィル学会 対談記事

メルヴィル学会機関誌Sky-Hawk第7号に、2018年度に行った「国際的研究の未来」という対談が掲載されています。

私が司会を務め、牧野有通学会長、巽孝之副会長が対談するという体裁ですが、実際は鼎談のようなかたちで、不肖私も対談にかなり参加しています。

日本のアメリカ文学研究者が英語で国際発信する意味とは何か、どう国際発信すればよいかなど、様々なトピックについての対談が、35ページ超に渡って掲載されています。特に、これから英語で海外に発信していきたいという若手研究者の方々に読んでもらえればと思います。

また、本号ではメルヴィル生誕200周年を記念したアンケート企画や、古屋耕平先生による拙著Modernizing Solitudeの書評も掲載されています。

日本メルヴィル学会会員でない方もお求めいただけるようです:https://www.melville-japan.org/%E5%AD%A6%E4%BC%9A%E8%AA%8C-%E7%99%BA%E8%A1%8C%E6%83%85%E5%A0%B1/。ご興味があればぜひ。


『週間読書人』で拙著が取り上げられました

12月20日刊行『週間読書人』の「2024年回顧--収獲動向」という特集で、拙著『誘惑する他者:メルヴィル文学の倫理』が取り上げられました。評者は福岡女子大学の長岡真吾先生です。 「海外学術誌に掲載された論文を日本語にしてまとめた精緻な労作」と紹介してくださっています。ありがとう...