2019年6月23日日曜日

シンポジウムのお知らせ

6月29日の日本アメリカ文学会東京支部例会において、「<関係性>の詩学――アメリカン・ルネサンスを起点として」というシンポジウムに登壇します:http://www.tokyo-als.org/2019/06/2019june_meeting/

私は「ネットワーク小説としての『白鯨』:Lonely Individualismをめぐって」というタイトルで発表します。私がここのところ取り組んでいる「個人主義」というテーマについて考察する予定です。要旨は以下の通りです:

<発表要旨>
    本発表は、「繋がり」と「孤独」という相互補完的な力学をめぐってハーマン・メルヴィル『白鯨』(1851) を考察し、エイハブ船長の孤独のありように肉薄することを目指す。ある批評家はBruno Latourの理論を援用しながら『白鯨』を「ネットワーク小説」と形容しているが、本発表ではそうした先行研究を踏まえつつ、作品内におけるコミュニケーションのネットワークに焦点を当てたい。『白鯨』には電信、鉄道、郵便などのコミュニケーション技術・メディアに関連する比喩表現が満ちており、エイハブは白鯨との繋がりを想像上のネットワークを通じて幻視する。しかし、いくら繋がりを求めようとも白鯨から反応を得ることはなく、エイハブのコミュニケーションは一方通行のものにとどまる。関係の網目に注目したときに初めて、そこからこぼれ落ちるエイハブの孤独が浮き上がるはずだ。
    ネットワークという観点から『白鯨』を考察する本発表の目的は、エイハブの孤独に光を当てるだけにとどまらず、「孤独なエイハブ=個人主義」というこれまでの批評的前提を問い直すことにある。“lonely individualism” という新たな概念を提起し、エイハブの個人主義、さらには十九世紀アメリカ文学研究における個人主義の捉え方を再考するきっかけとしたい。

第12回国際メルヴィル学会

6/17-21にニューヨーク大学で開催された第12回国際メルヴィル学会で発表をしてきました。

私が参加したのは "Spanish America and Melville" というラウンドテーブルで、"The Great Nation of Uncertain Futurity: Non-Human Time in 'The Encantadas'" というタイトルで発表しました:https://melville2019.weebly.com/conference-program.html

私以外の登壇者が全員Spanish Americaを専門にしているという、完全にアウェイの環境でしたが、改めてメルヴィル作品におけるSpain表象の重要性を再認識できました。本発表の内容はいずれ活字化する予定です。


『週間読書人』で拙著が取り上げられました

12月20日刊行『週間読書人』の「2024年回顧--収獲動向」という特集で、拙著『誘惑する他者:メルヴィル文学の倫理』が取り上げられました。評者は福岡女子大学の長岡真吾先生です。 「海外学術誌に掲載された論文を日本語にしてまとめた精緻な労作」と紹介してくださっています。ありがとう...